2025年7月25日金曜日

二重アバンギャルド。


先日、久々にライブハウスに行きました。コロナ禍が始まったとき以来足を運んでなかったので、5~6年ぶりになりますか。

新川です。どうも。


長年の友人である水谷ケイゴさん率いるロックバンド、Honeydewの新作EPのリリース記念ライブだったんですけどね。「良かったら観に来てください」って誘われて。で、同じく長年の友人である中嶋佑樹くんのバンド、SPIROも出るというので、しばらく会ってなかった旧友たちとまとめて再会を果たすいい機会だと思って行ってきました。いや、楽しかったです。やっぱり旧知の音楽仲間と共に過ごす時間はいいものですね。


ところで、SPIROのステージを観ているときになかなか興味深い一幕があって。

ちなみにSPIROはヴォーカル/ギターの中嶋くんとドラムの武井由佳さんの二人組で、その日はニューウェーブっぽいロックナンバーを中心に演奏してたんですけど、その中に1曲、不思議なブレイクが入る曲があったんですよ。初めて聴く曲で。

こう、ワンコーラスぶんくらい歌が終わったところで、いったん演奏がストップするわけ。で、静かになったと思ったら、中嶋くんがエレキギターの弦を手のひらでミュートした状態でピックで撫でて「ピキピキピキポロポロポロ」みたいな音を鳴らし始めたんです。ASMR的な(笑)。

で、「へぇ、シュールな展開だな。面白いじゃん」なんて思いながら見守ってたら、それをやりながら中嶋くん、マイクに向かってボソッと「・・・これは今、時間の経過を音で表現しています」って言い出して(笑)。なんか説明してくれて(笑)。その瞬間会場でちょっと笑いが起きて、ぼくも笑ってしまいました。「ユルいな〜」みたいな。

ちなみに中嶋くんはお茶目なので、その言動自体はいつもの彼のノリという感じでとくに違和感はなかったんですけど、でもその一方、そういう前衛的なパフォーマンスを披露しているアーティストが、それについて自ら「説明する」ってスゲー斬新だなと思って(笑)。笑いながらもちょっと感心してしまいました。


だって、たとえば前衛舞踏のひとが、舞台で激しく体をクネらせながら「これは今、燃えさかる炎を表現しています」とかフツー言わないでしょ(笑)。

元来、前衛芸術に説明など不要です。それらの解釈は鑑賞者の感性に委ねられるものです。とはいえ。常識にとらわれない自由な表現を追求してきた前衛芸術の世界においては、いつの間にか「説明をしてはいけない」ということが「常識」になってしまったとも言えますよね。

だから、その「前衛芸術における常識」を打ち破った中嶋くんのパフォーマンスは、二重の意味で前衛(アバンギャルド)だったわけです。すなわち「二重アバンギャルド」です(今テキトーに作った言葉ですが、気に入りました)。まぁ、中嶋くん本人は絶対そんなこと考えてなかったと思うけど(笑)。

それこそ前衛芸術の世界にどっぷり浸って生きてきたようなひとが、件の中嶋くんのパフォーマンスを目の当たりにしていたなら、衝撃を受けたかもしれない。「うわ!説明した!」みたいな(笑)。「説明しちゃったコイツ!」(笑)。


それではまた。