2024年11月15日金曜日

第4の壁破り。


改めて思ったんですけど、「第4の壁」って面白い概念ですよね。

新川です。どうも。


ご存知の方も多いとは思いますけど「第4の壁」というのは、もともと演劇の世界で使われていた言葉で、芝居が演じられる舞台とそれを見守る観客席との間にあるとされる「見えない壁」のこと。つまり「物語の世界」と「現実の世界」を隔てる境界線を意味する言葉です。

ちなみに観客席から見て舞台の後方にあるのが第1の壁、舞台の左右にあるのが第2・第3の壁、そして正面にある「見えない壁」が第4の壁というわけ。面白いこと考えるひとがいるもんですよね。だから映画の場合はスクリーンが第4の壁にあたります。

で、演劇でも映画でも昔から観客の意表をつく演出のひとつとして、しばしばこの第4の壁は「破られる」んですね。

たとえば一番よくあるのは、劇中の登場人物が「観客に話しかけてしまう」というやつです。「さてみなさん」とか言ってね(笑)。近年このパターンでおなじみなのは、やっぱりマーベルの『デッドプール』シリーズでしょう。あと松たか子さんが出てたテレビドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』では、松さん演じる大豆田とわ子が毎回突然カメラのほうを向いて「タイトルコール」をしてましたよね。あれも立派な第4の壁破りです。って、なんか犯罪みたいな言い方だけど(笑)。

それから観客に話しかけこそしないものの、登場人物が「物語の世界の住人であることを自覚している」ような描写によって第4の壁が破られることもあります(当然デッドプールはこちらにもあてはまります)。これはとくに漫画に多いパターンな気がしますね。キャラクターが「作者の存在」に言及したり「これって、こんな漫画だったか?」なんて台詞を言ったり(笑)。

まぁ、いずれにせよ「第4の壁破り」は、あくまでユーモラスな演出あるいはギャグであることが多いわけです。ただ、やはり「虚構と現実の境目が消失する瞬間」でもあるので、そう考えるとどこかドキッとする要素もあるんですよね。それこそテレビから貞子が出てきちゃうみたいな(笑)。


いや、こないだアマプラで『デッド・ドント・ダイ』(2019)っていう映画を観たんですよ。ジム・ジャームッシュが撮ったユル~いコメディ・タッチのゾンビ映画だったんですけどね。

ビックリしたのは、この映画(ちょっとネタバレしますけど)とある伏線が、終盤まさかの「第4の壁破り」によって回収されるんです。もちろんそれは完全なるギャグだったわけですけど、とはいえ近年ぼくが観た映画の中では地味に一番衝撃的な展開でした(笑)。「そんなのアリ!?」みたいな。気になった方は、ぜひご覧になってみてください。


それではまた。