2021年2月19日金曜日

ブレイクビーツ。


『Street Illusion』、いかがだったでしょうか。お聴きになりましたか?

ツイッター等で好意的な反応を示してくださったみなさん、ありがとうございます。本当に、心から嬉しいです。

新川です。どうも。


というわけで、今回は『Street Illusion』の制作裏話でもしてみようと思います。

まぁ、たびたび制作過程のレポートはして来ましたが、ああいうブラックミュージックに接近したサウンドを作っていたことなんかはナイショにしてましたからね。そういった、具体的にはどんなことを考え、どんな作業をして来たかという話を、やや曖昧になってしまった記憶をたどりながら(笑)してみます(長い話になるのでヒマなときに読んでください)。


***


まず、前作『Paintings of Lights』(2015)の制作を終えた時点で、「次はダンスミュージックのアルバムを作りたい」と思ったんです。もちろん歌モノでね。漠然としたアイデアでしたけど、それが出発点でした。

ぼくはもともとダンスミュージック、あるいはノリのいい音楽が大好きなんですが、自分の歌声に合わないと思っていたので、シンガーソングライターとしては、そういった曲を作るのはあきらめていたんです。それでスローからミディアム・テンポの曲ばかり作り続けて来たんですが、さすがに煮詰まった感があって(笑)。このへんで改めて、ぼくの歌声とダンスミュージックの可能性を探ってみようと。

まぁ、ダンスミュージックとひとくちに言っても、実にいろんなジャンルがありますからね。模索していけば、必ずぼくの歌声とフィットするサウンドを見つけられるはずだと思ったんです。
で、実際に曲を作りながら本格的に試行錯誤を始めたのが2015年の夏だったんですが、そこから最終的に「90’sヒップホップスタイルのブレイクビーツ」というアイデアに着地するまで、1年半もかかりました(笑)。


当初はシンセサイザーとサンプラーを駆使した、80年代後半のエレクトロニック・ファンクみたいな方向に行こうとしたんです。具体的には、スクリッティ・ポリッティの『Provision』(1988)、アンビシャス・ラヴァーズの『Greed』(1988)といったアルバムを参考にしてました。

でも、上手くいきませんでしたね。トラックを作るのは難しくないんですけど、そこに日本語の歌を付けてぼくの声で歌ってみると、まー、ダサい(笑)。荻野目洋子さんとかが歌ったらピッタリだったと思うんだけど(笑)。


でも、次にアプローチした「グラウンド・ビート」には可能性を感じました。

やはり80年代後半にイギリスのソウル・トゥ・ソウルというグループが流行らせたダンスビートなんですが、ミディアム・テンポで比較的ゆったりしたグルーヴが特徴なんです。これならぼくの歌声でも合うんじゃないかと思って、グラウンド・ビートの曲をいくつか作ってみたところ、これがなかなか悪くなかったんです。いい線いってました。

ただ、何か煮え切らない・・・今ひとつグッと来ないんですね。理由は、結局グラウンド・ビートにそれほど思い入れがないからなんです。たしかにぼくの歌声には合ってるけど、作っていて心がときめかない。こんまりじゃないけど(笑)。「やっぱりこれも違うな」と(とはいえ「Fairy Tale」という曲には、グラウンド・ビートのエッセンスが少し入ってます)。


それでいったん思考を切り替えて、ぼくの歌声に合うかどうかはさておき、純粋に今一番作ってみたいものを作ってみることにしました。それが「90’sヒップホップスタイルのブレイクビーツ」だったんです。
ちょうど「ヒップホップ」が、様々な形で再び注目を集めていた時期で、ぼくもリスナーとしてはヒップホップばかり聴いていたんです。実のところ、本当はヒップホップをやりたくてしょうがなかった(笑)。でも、さすがに自分の音楽として消化できる自信がなかったんで、その気持ちはずっと抑え込んでたんです。それを一度解放してやろうと。

で、大昔に買ったブレイクビーツのサンプリングCD(「ヒップホップっぽいドラムの音」がいっぱい入った、クリエイター向けの音素材集です)を引っ張り出してきて、それを使って件のビートを作ってみたんです。ゴリゴリのハードコア・ラップが乗っかりそうなやつを(笑)。そこに適当な曲を付けて、ぼくの歌声を乗せてみました。いわば正反対のもの同士をぶつけてみたわけ。半ばヤケクソで。

結果は、案の定全然合いませんでした(笑)。「ですよね~」みたいな(笑)。

でも、ブレイクビーツを作る作業は、やっぱりすごく楽しかったんです。もう心がときめきまくった(笑)。ヘタクソでしたけど、新鮮なモノ作りの喜びがそこにはありました。「やっぱりこれをやりたい!」。

かくして「ブレイクビーツ」のアルバムを作るという方針は固まりました。とにかくサウンドはこれで行くと。しかし依然として問題は、そこにぼくの歌声をどう違和感なく乗せるか?です。

が、話が長くなり過ぎましたね(笑)。この続きは次回にしましょう。


それではまた。