2025年3月28日金曜日

まだあったか!


アマプラで河合優美さん主演の映画『ナミビアの砂漠』(2024)を観ました。なんかタイトルからイメージしてたのとは全然違う映画でしたね。

新川です。どうも。


東京で暮らすイマドキの若い女の子の荒んだ恋愛模様を描いた話で、ナミビアの砂漠は本筋とはほとんど関係ない要素でした(笑)。まぁ、でも、そういうネーミングのタイトルってありますよね。

ともあれ、意外とブッ飛んだ映画で面白かったです。監督の山中瑶子さんはまだ20代の新人だそうですけど「また新しい才能が出てきたな」という感じがしました。

もっとも前半だけ観ると、よくあるリアリズム路線の若者青春映画なんですよ。むかし渋谷のミニシアターでよくかかってたような感じの。ただ物語が進むと、河合優美さん演じる主人公・カナは、恋人との関係が悪化したことで次第に精神を病んでいくんです。で、そこからが面白かったんですけど、カナの精神が壊れていくのに呼応するように、映画自体もだんだん壊れていくんですよ。それまでリアリズム路線だった映画が、予想外にシュールな展開になっていくんです。「何これ?どういう状況?」「いま何を見せられてるの?」みたいな(笑)。でもそれによって、カナがもう重症であることが伝わるっていう、この表現には意表をつかれましたね。


とくに、映画が壊れ始める最初のシーンのインパクトは強烈でした。ある日カナとその彼氏は、もはや日常茶飯事と化した取っ組み合いの大喧嘩をまた始めるんですよ。白昼、二人が一緒に暮らしている家の中で。で、カメラはちょっと引いたフィックスの画(え)で、そんな二人を冷ややかに映してるわけ。

すると突然・・・何の伏線もなく本当に突然、背景がピンク色の異空間(?)にいるもう一人のカナの姿が、画面右上に「ワイプ」で出現するんです。まるでテレビ番組でVTRを観ている出演者みたいに。

そしてワイプはゆっくり拡大していって、画面いっぱいになったところで、その謎の異空間にいるカナのシーンへと切り替わるんです。そのあとまた奇妙な展開になっていくんですけど、このくだりには目が点になってしまいました(笑)。

まさかこんなデヴィッド・リンチみたいな展開が、この映画の中で起きるなんて思ってもいませんでしたから。いや、ほんと、あのワイプにはビックリしました。


映画における「新しい映像表現」はあらかた出尽くして、もうないだろうって思いがちなんだけど、こういうの観ると「まだあったか!」ってなりますね(笑)。

だから結局アイデア次第なんですよね。だってワイプ自体は新しい映像表現でもなんでもないわけじゃないですか。でも「ここでそれが出てくんの!?」っていう意外な使い方をするだけで、いきなり新しい映像表現になる。

やっぱりそれが新しいモノ作りの秘訣だよなぁと。改めて思ったりもしました。


それではまた。