2015年2月3日火曜日

朝の散歩道で。


休日なのに、早起きをした。久しぶりに。
どうしたものか、今朝はずいぶん早くに目が覚めた(いつもは昼まで寝ている)。
せっかくだから、朝食をとった後、朝の散歩に出かけてみることにした。
寒かったけれど、いい天気だし、気分は爽快(なんたって「これから仕事」じゃないんだからね)。やっぱり休日の早起きは、なんだかトクした気分になるなぁ。
なーんて思いながら、冬の朝日に包まれて、きらきらと輝く川沿いの土手を歩いていると、向こうから老婦人がひとり、やってきた。
盲人用の杖をつき、茶色いサングラスをしているので目が不自由なのだとわかったその人は、ニコニコと上機嫌で、歩きながら歌を口ずさんでいた。
「おばさん、陽気だなぁ。おはようございます」と、心の中で挨拶をし、すれ違った後、背後に遠ざかっていくその歌声に、なんとなく耳をすませてみた。
不思議な歌声だ。ビブラートがかかっている。上手い。良く通る声だし。しかし、言葉は聴きとれない。どうも日本語の歌ではない。英語でもない。何語だ?それにこのメロディーはなんだ?歌謡曲?民謡?クラシック?何のジャンルだ?ちょっと聴いたことのない音楽だ。あのおばさん何者だ?やや、ただものじゃないぞ。
そこまで気づいて振り返ると、彼女の姿は、なかった。
呆気にとられたぼくの目の前には、誰もいない土手の一本道が、どこまでも続いていた。フェードアウトした歌声の余韻だけが、宙を舞っていた。