2015年5月15日金曜日

対談。安田寿之 × 新川忠(5)


C H A P T E R 5 録音方法。


安田 ちょっと話変わるんですけど、
   機材は何を使われてるんですか?

新川 「Paintings of Lights」では、
   19歳くらいのころに買った
   YAMAHAのQS300っていう、
   シーケンサーと一体型の
   シンセサイザーがあって、
   ほとんどそれで作りました。
   もう20年近く使ってるんですけど(笑)。
   それとYAMAHAのRX5っていう
   ドラムマシーンを使いました。

安田 あー、RX5。
   ぼくは、RY30持ってますよ。
   全然使ってないですけど。

新川 こーんなでっかいんですけど、
   しょーもない音が
   ちょっとしか入ってないっていう(笑)。
   ドラムは全部それです。
   あり得ないですよね(笑)?

安田 (笑)いやいや、すごいいいですよ。
   そういうのって・・・
   確信犯なんですか?新川さんは。
   今みんなソフトシンセでやってる中、
   やっぱり、目立つじゃないですか(笑)。
   これは、狙ってやってるんですか?

新川 ・・・狙っちゃいないと思うんですけどねぇ。

安田 1st(「sweet hereafter」)も、
   カセットに録ったりとか。

新川 はいはい。

安田 なんかぼくは、
   ユーモア的な発想があるのかな?
   と思ったんですよ。
   時代感をなくすみたいな・・・
   ある種のユーモアとして、
   いつの時代の音楽かわからないような
   録音方法を考えてるのかなと思って。

新川 どうかな、たぶん・・・
   無意識に狙ってるかもしれないですけど、
   結果的にそうなってしまった
   っていう感じが強いですかね。
   作り始めるときは、
   そんなに確信犯じゃないですよ。
   そこまで意識的ではなくて・・・

安田 なんとなく?

新川 なんとなくですね。
   ただ、面白いだろうと。

安田 はいはい。

新川 やっぱり、
   誰もやってないことを面白がるのって、
   そこは安田さんと
   同じかもしれないですけど(笑)。
   誰もこういうことやらないから、
   じゃ、やったらどうなるんだろう?と思って。
   それこそ4トラックの
   カセットMTRとかで・・・
   それでデモ作るんならまだしも、
   本チャンのアルバム1枚作っちゃうなんて
   誰もやらないから(笑)。
   じゃ、それやってみたらどうなるのかと。
   RX5なんて、今どき時代遅れも甚だしい
   サウンドだけど・・・

安田 (笑)

新川 こう、そいつを
   まともに相手してですね(笑)、
   まともなものとして扱って、
   アルバム1枚にフィーチャーしてやったら、
   どういう世界になるのかなぁっていう・・・
   そんな感じですかね。

安田 そうですね。
   なんか、RX5じゃなきゃいけないような
   必然性を感じますよね(笑)。
   1枚通して聴くと。

新川 だから、結果的にそうなるのかもしれません。
   そこまで狙ったわけじゃないけれど、
   「これでいくんだ!」と、
   とくに根拠もなくですね(笑)、
   やみくもに突っ走った結果・・・
   なぜか説得力が出てしまう(笑)。

安田 そうですねぇ。
   でも、そこには曲の良さとか、
   アレンジとかが伴ってないと、
   絶対説得力は出ないですから。
   やっぱり、そこの完成度があってこその・・・
   完成度の高さがあるから、
   説得力があるんだと思いますねぇ。

新川 なんですかねぇ。

安田 1stは、その4トラックのカセットで・・・
   ミックスは(高橋)健太郎さん?

新川 えっと、マスタリングが健太郎さんですね。
   ミックスまで、ぼくがやりました。

安田 あ、そうかそうか。

新川 カセットMTRで(笑)。
   大変でしたよ、もう。

安田 どうやってたんですか?
   もう、カセットの中で?

新川 そうです。
   一応、フェーダーとEQがついてるんで、
   それだけでやってましたね。
   あと、ハードのエフェクターをつないで。

安田 あー、インサーションとかで。

新川 はい、それでもうピンポンして(笑)。

安田 はいはい(笑)。

新川 どんどん劣化してくんですよね(笑)。
   ほんとはね、
   もうちょっといい音のはずだったんですけど、
   さんざんやった結果、
   あんな音になってしまった(笑)。

安田 あー、面白いですねぇ。
   2nd(「Christy」)の音も、
   ぼくすごい好きですねぇ。
   ドラムとか、なんであんないい音で
   録れてるんですかね?

新川 すっごい苦労しました。
   あの音にするまで。

安田 あれもミックスは新川さん?

新川 自分でやりました。

安田 やっぱり、ミックスも・・・
   ほんと、上手とか言うのじゃなくて、
   こう、一体感が出てる感じがしますねぇ。

新川 独特ですか(笑)?

安田 うん(笑)。
   いいなと思いますよ、だから。
   ぼくも変な音像でやるのが好きなんで。
   ドラムよりベースのほうが大きいとか。
   たぶん、普通のエンジニアに頼んだら、
   そうはならないと思うんで。

新川 「Nameless God's Blue」でも
   やってますよね。
   あのピアノの音とか・・・

安田 そうですね(笑)。
   ピアノ、10チャンくらいで
   録ってるんですけど(笑)。
   ピアノをまずミックスする
   っていう作業をやって(笑)。

新川 「なんかノイズ聴こえるな」と思ったら、
   鍵盤に爪が当たる音なんてのを
   拾ってるっていう(笑)。

安田 そうなんですよ。
   松井敬治さんって友達のミュージシャンが
   三鷹台にスタジオ持ってて、
   そこで録ったんですけど・・・
   すごい広いスタジオで。
   緑が見える窓がいっぱいあって。

新川 いいですねぇ。

安田 密閉スタジオじゃないんですけど。

新川 場所大事ですよ。
   そういうとこ、好きですねぇ。

安田 ただまぁ、ちょっと苦労はしますけどねぇ。
   雨が降ってきたら、
   ちょっと待たなきゃいけないとか(笑)。
   夏とか昼間セミが鳴いてて録れないとか。

新川 それはぼくも一緒ですよ。
   自宅録音ですからね。
   「エアコン止めなきゃ」とか。

安田 あ。そうだそうだ。
   去年の夏ぐらいに歌を録ってたんですけど、
   エアコン止めなきゃいけないんで、
   その、普通の家なんで。
   もう、暑くて暑くて・・・

新川 はいはい(笑)。
   わかります。
   同じことやってる(笑)。

安田 これね、みんな笑うんですけど・・・

新川 はい(笑)。

安田 裸で録ってたんですよ(笑)。

新川 (笑)

安田 もう、暑くて着てられない!
   ってなって(笑)。
   下までは脱いでないですけど・・・

新川 (笑)

安田 下は一応、履いてましたけど(笑)。
   上は脱いで・・・

新川 (笑)本気出したブルース・リーとか
   ジャッキー・チェンのような状態で。

安田 (笑)そうですね。

新川 ヴォーカルは録っていたと(笑)。

安田 裸で歌ってるって、そう思って聴いたら
   ちょっと面白いですよ(笑)。

新川 笑っちゃう。
   「これ、裸で歌ってんだぁ・・・」(笑)。

安田 (笑)

新川 「その感じが出てる」だって(笑)。

安田 それはわからないと思う(笑)。

新川 でも、ぼくもそうでしたよ。
   夏はそうなんですよねぇ・・・
   もう、汗だくで録りましたよ。

安田 汗だくになってるとは
   思えないですけどねぇ(笑)。
   新川さんの場合。

新川 その実、ヒドイですから(笑)。
   その現場は。

安田 ええ(笑)。

(つづく)