2018年6月22日金曜日

終わってくれない。


歌録りが終わったので、とりあえず映画観に行きました。自分へのごほうびです。
新川です。どうも。

話題の『デッドプール2』と『万引き家族』のどっちを観ようか迷った結果、『万引き家族』を観てきました。
みなさんもご存知、今年のカンヌ映画祭最高賞のパルムドール受賞作品。ぼくは是枝裕和監督の長年のファンでしたので、受賞のニュースを知ったときは「うわぁ、ついに!」という感慨が湧きました。

ぼくが是枝監督に注目したのは、2001年公開の3作目『DISTANCE』からです。
ぼくは当時二十歳そこそこだったんですが、それまで観たことのないタイプの映画に言葉では言い表せない衝撃と感動を覚えて、劇場(今はなき渋谷シネマライズ)に3回も観に行ってしまいました。ほどなく開催された「是枝裕和オールナイト」にも足を運び、そこで結局4回目の『DISTANCE』と、デビュー作『幻の光』(1995)、『ワンダフルライフ』(1998)も鑑賞して、ぼくはすっかり監督の映画に魅了されてしまいました(ちなみにそのイベントには監督ご本人が登壇してのティーチ・インのコーナーもあったんですが、直接質問をぶつける勇気は出ませんでした)。

『DISTANCE』の着想から完成までを記録した書籍『DISTANCE~映画が作られるまで』にも非常な影響を受けまして、この本はぼくのバイブルになりました。
単なる映画の制作日記という枠を超えた、当時のぼくにとっては、創作とは何かを考える哲学書であり、また是枝裕和という人物の敬愛すべき「眼差し」が記された思想書だったんです。いわゆる「人生を変えた一冊」ですよね。1stアルバムを作ってる時期でしたけど、もう繰り返し読みました。

そんな是枝監督も当時はまだ知るひとぞ知る存在だったんですが、新作が公開されるたびに何かしらの話題をさらうようになって、今では国内外の映画祭の常連、そしてパルムドールと・・・まさかここまでの大監督になるとは思いませんでした。でも長年見守ってきたファンとしては、まさに世の中が、時代が、ようやく是枝監督に追いついた、ざまーみろ(笑)という思いです。

で、件の最新作『万引き家族』の感想ですが。
ひとことで言っちゃうと、「切ない・・・」。って「またそれかい」という感じですけど(笑)。いや、本当に切なかったです。物語の展開がちょっと重ためだったことなんかもあって・・・観終わってからしばらくひきずりました。
そう、是枝監督の映画って「ひきずる」んですよ。悪い意味じゃなく。そこが大きな魅力でもあるんです。なんて言うか・・・映画はひとまずここで終わるけれど、物語は終わらない、みたいなね。登場人物たちの人生はその後も続いていく、っていう印象が強烈に胸に残るんです。
それは、「めでたしめでたし」的なカタルシスがないからなんですけどね。今作を含めたどの作品も。「ああ、ここで終わっちゃうんだ・・・」ってとこで、いつも終わるんです。そのタイミングに毎回唸るんですけど、ことに今回の『万引き家族』の「ああ、ここで終わっちゃうんだ・・・」感にはウーウー唸りました(笑)。もういろんな思いが交錯して。だから、映画のことをずっと思い続けてしまう・・・是枝監督の映画は終わらないんです。っていうか、終わってくれない(笑)。やっぱりすごい監督ですね。

それではまた。