2019年9月6日金曜日

フェイク・ダイアリー 2019.9.6


また部屋にアレサ・フランクリンの幽霊が現れた。
アルバムは完成したのか?と訊かれたので、まだ全然終わらないと答えると、いったいいつまでやっているつもりなのかと説教をされた。やれやれ。
しかし今やぼくは彼女の正体がイタチであることを知っているのだ。

「さっさとアルバムを完成させなさい」
「一生懸命やってるよ。けど終わらないんだもの。・・・それより知ってるんだぜ?」
「なによ?」
「あんたの正体がイタチだってことをさ」
「おかしなこと言い出すわね。いったいどっからそんな考えが出てきたわけ?」
「とぼけるなよ。こないだの晩、イタチが電線を歩いてくとこをこの目で見たんだ。聞けばイタチってのはひとを化かす妖怪だって話じゃないか。それであんたの正体はイタチに違いないと踏んだわけさ。どうだい、図星だろう」
「なかなか面白いじゃないの。でもそれだけじゃアタシがイタチだってことの証明にはならないわね。何か証拠を挙げてごらんなさいよ」
「証拠?うーん、ちょっと待ってよ。・・・そうだ。じゃあ、これからする質問に答えてくれよ。いいかい?」
「いいわよ」
「ビールを一杯やりに町の中華料理屋に入ったとする。町中華ってやつさ。そこであんたならビールのつまみに何を頼む?」

我ながらうまい質問だ。間抜けなイタチにはどうせ「餃子」だの「レバニラ炒め」だのといった通りいっぺんなメニューしか思いつけやしまい。しょせんイタチ。
ところが、彼女の答えはこうだった。

「町中華で何をつまみにビールをやるかって?そんなもん八宝菜に決まってるじゃないの!」
「なにい!」

アレサ、町中華のプロかよ!


※この日記はフィクションです。