2025年6月20日金曜日

早い。早過ぎる。


先週のニュースになりますけど、スライ&ザ・ファミリーストーンのスライ・ストーンが亡くなっちゃいましたね。R.I.P.

新川です。どうも。


スライ&ザ・ファミリーストーン(以下ファミリーストーン)と言えば、我々ブラックミュージックファンにとってはジェームズ・ブラウンと並ぶ偉大な存在。いわゆる「ファンク」のレジェンド、そしてヒップホップのサンプリングのネタでもおなじみっていう(笑)。

そんなわけで、ここ数日ファミリーストーンのアルバムを聴き返してるんですけど、やっぱりカッコいいですねぇ。まぁ、今の時期には暑苦しい音楽だけど(笑)。

ちなみにぼくの好きなアルバムは『暴動(原題:There’s a Riot Goin’ On)』(1971)。前作『Stand!』(1969)でキャリアの頂点を極めたあと、スライが麻薬に溺れるようになってしまい(ザ・60年代ミュージックシーン)、バンドが壊れ始めたころの作品ですよね。加えてベトナム戦争の泥沼化と、それに伴うラブ&ピース幻想の終焉という時代背景もあって、ファミリーストーンのアルバムの中ではとりわけ暗いシリアスな作品です。でもそこがむしろカッコ良かったりして、今ではポップミュージック史に残る名盤のひとつと言われています。


個人的にこのアルバムの最も注目すべき点は、音作りに「リズムボックス」を多用しているところ。つまりプログラムされた機械のビートとミュージシャンによる楽器の生演奏を組み合わせるという、ブラックミュージックの歴史においては無茶苦茶時代を先取りしたことをやってるんです。もちろん昔のリズムボックスですから「ボン」「チチチチ」「ピシ」みたいな可愛らしい音しか出ないんですけどね(笑)。でもそれがクールなファンクと絶妙にマッチしてるとこがまたスゴい。

たぶんなんですけど、リズムボックスのそのチープな音色に秘められた大いなる可能性に、スライは誰よりも早く気づいていたんだと思います(ハイになってたせいもあるかもしれない)。そのリズムボックスの発展形が、のちのRolandのドラムマシーンTR808で、その808をベースにしたドラムサウンドがその後のブラックミュージックのスタンダードになっていくわけですからね。

それこそシングルカットされてヒットした名曲「Family Affair」なんて、改めて聴くとビックリしますよ。今でこそ打ち込みのドラムにお洒落なエレピが乗ったR&Bナンバーなんて珍しくもないですけど、それと同じアプローチを50年以上も前にやってるんですから。これは早い。早過ぎる。十万石まんじゅう(笑)。


もちろんファミリーストーンの他のアルバムにもそういう注目点はいろいろあって。だからレコード・プロデューサーとしてのスライ・ストーンってマジ天才だなって、改めて思いました。


それではまた。