2023年3月3日金曜日

ナイトフライ。


数年前に音楽プロデューサーの冨田恵一さんが、ドナルド・フェイゲンの名盤『The Nightfly』(1982)の魅力を分析/解説して話題を集めた著書『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』(DU BOOKS)を、今ごろ読んでいます。

新川です。どうも。


いや、『Nightfly』は、ぼくも十代のころから愛聴してるアルバムなので気にはなってたんですけど、本が出た当時はちょっと興味が遠ざかっていたので、いずれ読もうと思いつつ長らく忘れちゃってたんです。

でもこの1~2年の間に、またスティーリー・ダンやドナルド・フェイゲンのソロを聴き返すようになったので「そういえば、あの本まだ読んでなかったな」と思い、先日ようやく購入して読み始めた次第です。

まだ途中ですけど、たしかにこれは非常に興味深い本ですね。面白い。ただひとつツッコミを入れさしてもらうと、「誰にでもわかるように解説した」本だと序文にあるんですが、明らかに音楽に関する専門的な知識がなければわからないような話がガンガン出てきます(笑)。


それにしても驚いたのは、『Nightfly』の制作エピソードとして、ドラム・トラックが実は全て「打ち込み」だったという話。「あれナマじゃなかったの!?」と。

もちろん、音源はレコーディングに参加した名うてのドラマーたちによる生演奏なわけですけど、それらをサンプリングしてイケてるとこだけループさせたり、場合によっては一音ずつバラして編集したりしてたそうですね。だから手法としては「ブレイクビーツ」と同じですよ。これは知りませんでした(そこまでのことができる高性能のサンプラーが当時存在していたことにも驚きましたが、それはエンジニアのロジャー・ニコルズが独自に開発したマシンだったそうです)。

でもこの話を知ってひとつ腑に落ちましたよ。本の著者である冨田恵一さんは、打ち込みで生演奏みたいなドラム・トラックを作ることを得意にされてる方ですが、そのルーツは『Nightfly』の影響だったんですねぇ。いやはや。

あと、冨田さんが個人的に感銘を受けたという「アルバムのハイライト」の話も面白かった。感動ポイントって人によって様々ですけど、やっぱりポップ・マエストロは着眼点が違うなぁと思いました。「なるほど、そこに感動するのか」みたいな。

だから、やっぱりこの本を一番楽しめるのは、『Nightfly』ファンのミュージシャンでしょうね。まぁ、まだ読みかけですけど(笑)。


ちなみに『Nightfly』におけるぼくの個人的なハイライトは・・・やっぱりアルバム唯一のスローナンバー「Maxine』ですね。聴くたびにあのムードに酔ってしまう。

歌詞もいいんですよね。まだ学生と思われる若者の視点で書かれた恋と青春の歌で。で、そんな歌を、中年になったドナルド・フェイゲンが歌ってるってとこがまたいいんです。この感覚がグッと来る。ぼく自身すっかり中年になった今ではもう、グッと来まくりです(笑)。


> Donald Fagen / “Maxine” (1982)


それではまた。