2024年6月28日金曜日

惚れたら身の破滅。


先日、敬愛する黒沢清監督の新作映画『蛇の道』を観に行ってきました。いや、面白かった。

新川です。どうも。


今度の作品は黒沢監督が1998年に撮ったオリジナルビデオ映画『蛇の道』を、舞台をフランスに置き換えて新たに作った、監督初のセルフリメイク作品。オリジナル版では哀川翔さんと香川照之さんが演じた二人の主人公を、今作では柴咲コウさんとフランスの俳優ダミアン・ボナールさんが演じています。

ぼくは黒沢監督の映画はほぼ全部観ているので、オリジナルの『蛇の道』も昔一度ビデオで観ています。なのでどういう話なのかはだいたい知ってて観に行ったわけですけど、「何この面白い話!」と思って(笑)グイグイ引き込まれてしまいました。

まぁ、フランス映画として生まれ変わった新鮮さのおかげもあるでしょうけど、高橋洋さんが書いたオリジナルの脚本がそもそもパワフルなんですよね。ジャンルとしてはサスペンスなんですけど、普遍的に面白い要素が揃ってるんですよ。「復讐」と、それから「入り混じる嘘と真実」っていう。だからこれ、オリジナルを知らずに観に行ってたら余計に面白かったと思います。


あと、やっぱり黒沢監督は女優さんを美しく撮る名手だなと思いました。柴咲コウさん、綺麗でしたね。無茶苦茶コワいキャラクターでしたけど(笑)。とくに(若干ネタバレですけど)ラストの柴咲さんのアップショットは劇場で観たら強烈で、凍りついてしまいました。淀川長治先生だったら「この柴咲コウゆうひと、エラい女優さんですねェ。コワいですねェ」って言うはず(笑)。

でも、同時にすごく魅力的なんですよ。だから、これはオリジナル版にはなかった展開でしたけど、劇中で柴咲さんと恐ろしい復讐計画を共謀するダミアン・ボナールさんは、次第に柴咲さんに淡い恋心を抱き始めるんですね。それはすごくわかるわけ。こんな美しい女性と一緒に行動してたら無理もないと。ただ、どう考えてもこんな女に惚れるなんて確実に身の破滅案件なんですよ(笑)。だからダミアンさんに共感を示しつつも、「よせ!惚れるんじゃない!」って(笑)心の中で叫んでました。


でも、黒沢監督自身はかつて、往年の名監督たちのように「女優を美しく撮る」ことには苦手意識があるといった発言をされてるんですよね。それは自分の映画的趣向とは相容れないものだからと。やっぱり「活劇」を重視する映画作家ですから。

でもそのわりには昔から黒沢映画に出てくる女優さんって、ちゃんとしっかり美しいんですよ(笑)。その上魅力的なんです。それこそ黒沢映画に出ているのを観て個人的にファンになった女優さん、けっこういますからね。

だから今回の柴咲コウさんもその系譜に連なるかもしれない。うん、ちょっと好きになっちゃいそう(笑)。でも柴咲コウさんは、ご本人もまた「惚れたら身の破滅」のイメージがある方なので、あんまり深入りしないようにします。


それではまた。