2017年2月17日金曜日

マーク・レイ氏は幸せか?


急にあったかくなって春の風が吹き始めたと思ったら、花粉に警戒です。
もう鼻がムズムズしてきました(また面倒な季節がやって来たぜ)。
新川です。どうも。

今日はシブい映画を1本、観に行ってきました。
マーク・レイという、ニューヨーク在住のファッション・フォトグラファーを追ったドキュメンタリー映画です。
このマークさんは現在52歳で、かつては自身もファッション・モデルや役者として活動していたという、長身で超ダンディーなオジサン。
写真家に転向して以降は、美しく華やかなモデルたちとのフォト・セッション(当然夜遊びも)を日常にしているような、我々サエない野郎どもにとっては、まさに天敵のような人物です(笑)。
・・・と、思いきや、このマークさん、実は意外な素顔があって。
それがこの映画のタイトルにもなっているんですが、なんと「ホームレス」なんですね(正式タイトルは「ホームレス ニューヨークと寝た男」)。
肩書きだけならセレブ感ビンビンですが(笑)、そのキャリアは決して輝かしいものではなく、生活苦の挙げ句にとうとう「アパートの屋上」に、こっそり寝泊まりするという生活に行き着いてしまったひとなんです。
この映画は、どん底のような暮らしと華やかな世界を巧みに行き来し、ニューヨークの街角をタフに、そしてユニークにサバイブするマークさんのライフスタイルを追った作品です(こんなポール・オースターの小説に出てくるようなひとが現実にいるんですね)。

印象深かったのは、とにかくこのマーク・レイさんのキャラそのものでした。
ユーモアのセンスにあふれた、本当にチャーミングなオジサンで、女性にも男性にもモテる、いわゆる「愛されキャラ」のひとです。で、ルックスも申し分ないと来てますから、結局我々サエない野郎どもの天敵には変わりない(笑)。
ある意味、一番タチが悪い(笑)。何せイイ奴っていう。「目の敵にしようと思ったのにイイ奴!」(笑)。
人前ではちゃんと身なりを整えるっていう彼の美学も素敵でしたね(まぁ、ファッション・フォトグラファーとしては当然なんでしょうけど)。
その実、その洋服は、通ってるジムの洗面所でゴシゴシ洗ってたり、公園の公衆便所でヒゲ剃ってたりするんですけど(笑)。
役者の仕事もしている彼にとって(どうやらユニオンに登録しているらしく、不定期にエキストラや映画のチョイ役をやってるようです)、「演じる」という行為は、まさに人生そのものなんですね。
それだけに、時折カメラに向かって吐露する本音に垣間見える彼の苦悩の重さは、ずーんと胸に響いてくるものがありました。
とくに、「間違った生き方をしてきてしまったのでは・・・」と思う瞬間(誰もが思うことですよね)、落ち込んで自己嫌悪に陥ってしまったら、「とにかく笑い飛ばすことだ」という彼の言葉には、これ以上ないくらい深く共感してしまいました。

このドキュメンタリーは、マーク・レイという人物を通して・・・月並みな言い方ですが、「幸せとは何か?」を問いかける作品になっていると思います。
一見、よくある「栄光と挫折」モノにも見えますが、マークさんはそもそも栄光もつかんでいなければ、挫折もしていません(少なくともぼくはそう感じました)。
ただ「自由に生きたい」と思った人物なのだと思います。「自由に生きよう」と決意した若者が、そのまま老境に差しかかってしまい(笑)、その代償として「孤独」や「生活苦」がある・・・。しかし、マークさんは「ミジメなイタいオジサン」には、まったく見えません。ひとに好かれて、軽やかに、楽しそうに生きている・・・ように見える(笑)。
さて、このひとは「幸せ」なんだろうか?あなたはどう思いますか?という・・・。
映画はまだ公開中です(そろそろ終わっちゃうかな?)。興味を持たれた方は、ぜひご覧あれ。

それではまた。