2017年9月29日金曜日

わかりにくい面白さ。


行き詰まった末にやる気をなくす、という魔のゾーンに突入中。
新川です。どうも。

魔のゾーンだらけなんですけどね、ぼくのレコーディングは(笑)。
というわけで、気分転換に映画を観に行ってきました。敬愛する黒沢清監督の最新作『散歩する侵略者』を池袋シネリーブルにて。
ここ数年、次々と新作を発表している黒沢監督ですが、今回の『散歩する侵略者』、個人的には去年観た『クリーピー 偽りの隣人』『ダゲレオタイプの女』よりも高得点をマーク。面白かったです。
「宇宙人侵略モノ」という定番のジャンルを、また新たなアイデアでアレンジしたストーリー、ヒロインを演じた長澤まさみさんの美しさ・・・ぼく、長澤まさみさん、そんな好きってほどでもなかったんですけど、この映画の終盤はもう抱きしめたくなりました(笑)。あまりの愛おしさに。そりゃ夫役の松田龍平さんもクラッとするはずです(文字通りクラッとするんですが)。そして何より、最初から最後までわかりやすいエンターテインメントに徹した黒沢監督の演出!これは画期的(笑)。難解な作風でおなじみの監督ですからね。

それで思い出したんですが、数年前、脚本家の高橋洋さんとの対談の中で黒沢監督、今の娯楽映画に求められる「わかりやすさ」についての困惑と葛藤を語られていて。
監督が「面白い」と思うアイデアは、いつも周囲には「わからない」と一蹴されてしまうと(笑)。なおかつ、かつては「わからなくていいのだ!」とゴリ押ししていたアイデアも、いよいよ通用しない時代に突入してしまった・・・と。
だとすると、今回の最新作の「わかりやすい面白さ」は、ここ数年の試行錯誤と葛藤の末のひとつの成果とも見えてきます。でも、それがやりたいことをグッと我慢して全て封印した結果だとしたら・・・面白かったとはいえ複雑な心持ちがしますね。
黒沢監督の真骨頂は、やっぱり「わかりにくい面白さ」ですから(笑)。何がなんだかさっぱりわからないが、何かとんでもない事態が進行している・・・それもどうやらこちらの想像を遥かに超えたとんでもない事態が!という、あの感じ、あの興奮がたまんないわけです。でも、そんな映画を受け入れる土壌がどんどんなくなっているというのは、本当に残念です。

映画って、一人じゃ作れないですからね。音楽とか他のアートは、ぼくみたいに一人でやりたい放題のもん作って発表もできますけど、映画はそういうわけに行かないんですよねぇ・・・だからこそ奇跡のような1本が作られたりもするという、そこが魅力でもあるわけですけど。うーん、難しいですねぇ。

それではまた。