2019年6月21日金曜日

あっちゃんラブ!


黒沢清監督の新作『旅のおわり世界のはじまり』を観てきました。
新川です。どうも。

ここんとこすっかり映画からは遠ざかってたんですけど・・・やっぱり黒沢監督の新作だけは見逃すわけにいきませんでした。
黒沢清というひとは、いわゆる「娯楽映画」と「芸術映画」の微妙な境界線上にいる映画作家だと思ってるんですが、その作家性を「娯楽映画」のほうに振り切ったのが前作の『散歩する侵略者』(2017)だとすると、今度の新作は逆に「芸術映画」に振り切ってみせたような印象を受けました。
「出来事」を淡々とスケッチしたような、静かなトーンのロードムービー。劇的なドラマを期待するお客さんはもしかしたら寝ちゃうかも(笑)。正直なところ、ぼくも前半はちょっぴり退屈でした。ジム・ジャームッシュとかホウ・シャオシェンを観るテンションだったらストライクだったんでしょうけど、『龍馬伝』なんかにハマったあとでしたからさすがに(笑)。

でも、ぼくがこの映画に感じた大きな魅力は、ほかでもない主演の前田敦子さんでした。もっと言うと、前田さんを見つめる黒沢監督の「眼差し」に、ぼくは心を打たれました。
以前から黒沢監督が女優としての前田さんを絶賛しているのは知っていましたが、その彼女を主演に撮った今作を観て、はっきり「ああ、監督、あっちゃんのことが好きなんだな」とわかりました。
これはもう、黒沢監督がいくら言い逃れをしてもダメです(笑)。画面に出ちゃってんだもん、あっちゃんラブ!な感じが(笑)。ほんとに美しかったです、この映画の前田さん。とりわけ一カ所、長年の黒沢映画ファンとしてはちょっとびっくりするようなカットがあって・・・黒沢監督が女優をこんな風に撮るなんて!と。
でもって、最後はダメ押しで「愛の讃歌」とか歌わしちゃう始末ですよ(「愛の讃歌」て!)。ここに至ってはもはやあっちゃんラブを隠してもいない(笑)。なんでしょう、もう今までとはまた全然違う意味で、驚かされました。

けど、素敵ですよね。黒沢監督ももういい年なのに(笑)、自分の娘ほどの若い女優さんに恋をして、それまでの作風に変化が起きるなんて・・・ってもう決めつけてますけどね(笑)。いや、でもそうなんでしょう(笑)。少なくとも映画を観る限りそうとしか思えないんだもの。
好きなひとを写真に撮ると綺麗に映るって言いますけど。この映画はまさにそんな感じでした。あっちゃんのファンは必見ですよ。

それではまた。