また部屋にアレサ・フランクリンの幽霊が現れた。
しばらくぶりに出てきたと思ったら、「たまごかけぶとん」とは何か?などと、またしても意味不明なことを訊いてくる(始まった)。
やれやれと思いつつ、とりあえずあまりヤル気のないテキトーな答えを返す。
「そいつは今大流行してる新型ウィルスの名前だよ。あんたも『たまごかけぶとん』には気をつけたほうがいいぜ。あ、幽霊だから関係ないのか」
「・・・テキトーなことを言ってるわね?」
「だって、どうせまたあんたの考えたデタラメなんだろう?」
「デタラメじゃないわよ。こないだほんとに聞いたんだってば」
「どこで?」
「あの~、あそこで。バーミヤンで。東川口の」
「そんな果てしなく微妙なとこで何してんだよ?」
「東川口に異常な動きはないか探りを入れていたのよ」
「入れるな入れるな」
「だってその日はもうどうしようもなくヒマで、東川口で諜報活動するくらいしかやることがなかったのよ」
「ほかにもあると思うんだけどな」
「で、『たまごかけぶとん』に戻るけど・・・」
「戻らなくても大丈夫だぜ」
「いや、隣のテーブルにいた女の子二人がこんな会話をしてたのよ。『ねぇー、朝は何食べたぁー?』『えー、なんかぁー、たまごかけぶとんとかぁー』」
「それ、9割『たまごかけごはん』の聞き間違いだよ」
「『たまごかけごはん』って、何?」
「知らないの?」
「ねぇ、アタシがアメリカ人だってこと忘れてない?」
「完っ全に忘れてたよ。たまごかけごはんを知らないのが不思議なくらいにね。至ってシンプルな日本のソウルフードさ。その名の通り、ごはんに生たまごとしょうゆをかけて、ぐっちゃぐちゃにかき混ぜて食べるの。それが『たまごかけごはん』」。
「聞いた感じ、気色悪い食べものとしか思えないんだけど」
「いや、それが美味しいんだって。そいつをさらに海苔で巻いたりなんかしたらもう最高なんだぜ?」
「・・・コワいもの見たさで、ちょっと試してみたい気もするわね」
「ぜひ試してみてよ。なんなら今すぐ用意できるけど?台所に材料は全部あるから」
「マジ?じゃあ、いただこうかしら」
というわけで、たまごかけごはんをふるまったところ、アレサは目を丸くして感激。おかげで炊飯器の米と冷蔵庫にあったたまごを全部食べられてしまった。。
※この日記はフィクションです。