2023年10月13日金曜日

傑作。


先日リリースされたLampのニューアルバム『一夜のペーソス』を聴きました。

新川です。どうも。


えー、結論から言うと、傑作。でした。全20曲、1時間14分に及ぶ大作でしたけど、最初から最後までみっちり聴き入ってしまいました。

まず一番の感想は、「染谷さん絶好調だな」っていう(笑)。クレジットを見ると、今回は大半のソングライティングを彼が手がけてますしね。あと前回の話で取り上げたKaedeさんの『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』(2020)におけるプロデュースワークから窺い知れるように、今回の『一夜のペーソス』のノスタルジックかつ斬新なサウンドデザインは、おそらく染谷さん主導によるものでしょう。

ここ数年の間、染谷さんの頭上にはミューズが舞い降りていたのかしら(笑)。とにかく彼の創作意欲が爆発してるような印象を受けるアルバムでした(もちろん永井さんと香保里さん、そのほかのミュージシャンの方々も素晴らしい仕事をなさっていますけど)。


個人的にグッと来たナンバーは「深夜便」。あのセンチメンタルなムードはLampにしか出せない。「月世界旅行」もフレッシュで良かったですね。

でも何より感銘を受けたのは、このアルバムを全曲通して聴いているうちに、次第に音楽を聴いているというより、一本の映画を観ているような、あるいは一冊の小説を読んでいるような、そんな感覚に陥っていったことです。

言うまでもなく、それは至福の時間でした。それを味わうために1時間14分というのは必要な長さだったと思いましたし、で、やっぱりそれが「アルバム」の持つ力なんですよね。3分半のポップソングの寄せ集めと言えども、やりようによっては、それ以上のもっと大きな「何か」を表現することができる。音楽ファン、あるいは音楽家としてのぼくが「アルバム」という形式にこだわる理由はまさにそこにあります。

『一夜のペーソス』は、紛れもなく「アルバム」として完成された作品です。そして(無意味な深読みと笑われるかもしれないけれど)様々な「問いかけ」に満ちた作品だとも思いました。その問いかけに向き合うべく、これから何度でも聴きたいアルバムです。


最後にもうひとつ。1曲目の「夕星のペーソス」ですが、あの曲のメロディーは、昔Lampとぼくがやっていたネットラジオ番組のBGMとして使われていたものでした。永井さんが書き下ろしてくれたんですよね。エンディングのトークコーナーのバックで流れていたのが、あの曲だったんです。

たぶんそんなことはぼく以外誰もわからないと思ったので(笑)、ちょっとニヤリとしてしまいました。


それではまた。