「新しい音楽」を作りたい。
新川です。どうも。
次回作の構想を練っているうちに、ふと気づいたんですが。
とりあえず今のぼくは、何か新しい、これまでになかったような音楽を作りたいようだと。そういう方向に気持ちが向いてるなと。
音楽家としてのぼくの興味は、これまでずっと「過去」を向いてたんですよね。かつて流行ったけれど、今では忘れられてしまったポップスへのノスタルジー、あるいは考古学的なロマンが、ぼくにとって最大のインスピレーションだったんです。
そういった音楽を現代に再現しようとする行為に特別な喜びを感じてたんです。哀れな懐古趣味とバカにされたってかまうもんかと。そこはもう開き直ってね。「だって古い音楽が好きなんだもーん!」(笑)。
ですからディスコグラフィーをたどると、1stは1950~60年代のイージーリスニング、2ndは60~70年代のフォークロック、3rdは80年代のシンセポップ、そして今年リリースした『Street Illusion』は90年代のヒップホップ/R&B、といった具合に、それぞれのアルバムごとに「過去のポップス」へのオマージュを捧げてきたわけです。それも律儀に時系列を追う形でね。
そうなると次のアルバムは、流れからいって2000年代リバイバルか?と思うでしょ。でも今のところ、それをやるつもりはありません。
2000年代のポップスって、もはやぼくの手には負えないんです(笑)。ジャンルの多様化や細分化が始まった時代でしょう。「2000年代サウンド」というのが、なかなか特定できないんですね。これというイメージが湧かないんです。
一部の若者たちに至っては、むしろ古い昔のポップスを愛好するようになってましたしね。同時代の音楽にはない新鮮な魅力をそこに感じて。言うまでもなく、その中にぼくもいたわけです。
つまり2000年代から、ぼくはもう「過去」のポップスを振り返り始めてるんですよ。作り手としての「振り返り」の作業は、ここで一周しておしまいにならざるを得ないんです。
たぶんそのせいでしょうね。ようやく未来に目を向けたっていうのは(笑)。とうとう振り返れないとこに来ちゃった、みたいな・・・いや、しつこく振り返ってもいいんですけど。過去の音楽に学ぶべきことはいくらでもありますから。ただ、過去を再現するような音楽を作るのはもういいかな、という心境になってます。
奇しくも、2003年にリリースしたぼくの1stアルバム『sweet hereafter』の1曲目はスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのカバーで、タイトルは「I’ll try something new」(「何か新しいことをしてみせるよ」)。なんだか昔の自分からのメッセージみたいにも思えます。
それではまた。