2021年9月10日金曜日

アルバムの舞台。


先日ツイッターで、『Paintings of Lights』(2015)をよく聴いてくださっているという方から、面白い質問のメッセージを頂きました。

新川です。どうも。


あのアルバムの「舞台」となった場所はあるのでしょうか?というご質問だったんですが・・・映画や小説ならともかく、ポップスのアルバムを聴いてこんな質問が出てくるなんてあんまりないですよね(笑)。

でも、嬉しかったです。そんなことを尋ねてみたくなるアルバムになっていたのだとしたら、それこそまさにぼくが望んでいたことですから。

実際あのアルバムの曲の多くは、ヨーロッパの風景、あるいは「ヨーロッパ的」な風景をイメージして作りました。ご質問の通り、実在する場所をモチーフにした曲もあるんです。


たとえば「霧の中の城」は、フランスの観光名所のひとつでもある「モン・サン・ミッシェル」(海の上にそびえ立つ古城です)をイメージしています。

霧の中にモン・サン・ミッシェルのシルエットが浮かんでいる幻想的な写真を、たまたま本屋さんで見かけたんですよね。その写真にインスパイアされて「霧の中の城」を探す男の話を思いつき、それを歌にしたんです。


「ハワースの荒野」というのも、イギリスのヨークシャー地方に実在する場所です。

『ブロンテ姉妹』(1979)という映画を観たとき、その荒涼とした原野の存在とハワース(Haworth)という地名、そしてそこで生涯を過ごしたエミリー・ブロンテ(小説『嵐が丘』の作者)のエピソードを知り、そのことに非常な感銘を受けてこの曲を書きました。


「眺めのいい部屋」の歌詞に出てくる「見下ろしたアルノ」というのは、イタリアのフィレンツェを流れるアルノ川のことです。これも映画ネタで(笑)、ジェームズ・アイヴォリー監督の『眺めのいい部屋』(1986)の冒頭のシーンとその舞台を引用しています。


他にも具体的な場所は特定できませんが、とにかくいろんな映画や写真や絵画などで目にした印象的な風景を「舞台」にして、それぞれの曲を作りました。ちなみにどの場所も実際に訪れたことはありません(笑)。


というわけで、『Paintings of Lights』の「舞台」についての質問に、この場を借りて答えさせていただきました。ご参考になれば幸いです。


それではまた。