2024年6月7日金曜日

今夜はブギー・バック。


こないだふと気づいたんだけど、スチャダラパーの「今夜はブギー・バック」って、もう30年も前のヒット曲になるんですねぇ(リリースは1994年)。

・・・そんな昔の話だったっけ(笑)。いやはや。

新川です。どうも。


思えば、あれが日本のラップの最初のヒット曲だったんですよね。もっとも、ぼくは当時も今も「ブギー・バック」はあまり好きな曲じゃないんですけど(笑)。

とはいえ、あの曲のヒットがその後の日本のヒップホップ・シーンの発展に大きく貢献したことは事実ですし、そういう視点から評価するなら、やはり非常に優れた楽曲だったと言わざるを得ません。


ご存知のように「ブギー・バック」は、当時人気のあった小沢健二さんのヴォーカルをフィーチャーした曲です。まず小沢さんのキャッチーな歌から始まって、それからバトンを渡すように今度はボーズさんのユーモラスなラップが始まる。

この流れが良かったんですよね。つまり当時はまだ圧倒的多数派だった、ラップに馴染みのないひとでも「入りやすい」構成だったんです。アートやビジネスの分野でよく言われる、「新しいもの」を提示するときは「馴染みのあるもの」を入り口にして受け手を誘導すること、という方法論そのものですよ。みんな大好きなオザケンの新曲かと思って聴いていたら、それが途中でラップの曲に「変身」する。そこに多くのひとが新鮮な魅力を感じたんでしょうね。

もっとも「歌」と「ラップ」をミックスする手法自体は、あの時点で海外の音楽シーンではすでに定番化していたスタイルだったんです。それこそ「featuring 〇〇」なんていうクレジットの仕方も含めてね。だからスチャダラパーと小沢さんは、ある意味「ブギー・バック」を通じて、そういった海外のポップカルチャーを初めて日本に紹介したわけです。


もうひとつ、「ブギー・バック」が多くのひとに受け入れられた理由は、徹底して歌詞に内容がないことだったとぼくは思っています(笑)。

今でもラップに馴染みがないひとは、よく「何を言ってるのかわからない」っていうことを気にするでしょう。でも「ブギー・バック」は、何を言ってるかなんてわかる必要ないんです(笑)。「これはとくに意味のない、言葉の遊びですよ」ということが明確に示された歌詞ですからね。おかげでみんな「内容の理解」なんて気持ち良く忘れて、ラップのノリや楽しげな雰囲気そのものを素直に受け入れられたんじゃないでしょうか。


ただ、忘れちゃいけないことですけど、スチャダラパーの3人はそもそもヒップホップ「ガチ勢」のひとたちです(笑)。

でも当時の日本でガチのヒップホップをやっても、サマにもならないし、誰にもウケない。そのことをよくよく理解した上で「ブギー・バック」みたいな軽〜い路線の曲をやったんですよ。で、それを見事ヒットに導いて、多くの日本人にラップ及びヒップホップの存在を認識させたことは、やはり偉大な達成だったと思います。

・・・っていうことをね、当時「ブギー・バック」を聴いて、「レベルが低い」とかナマイキなこと言ってバカにしていた自分に言いたい(笑)。


それではまた。