先日アマプラで『落下の解剖学』(2023)という映画を観ました。昨年のカンヌ映画祭のパルムドール受賞作品ということで、今回も真面目なチョイス(笑)。
新川です。どうも。
監督はジュスティーヌ・トリエさんというフランスの映画監督。物語は、夫の転落死を巡って殺人の疑いを持たれてしまった著名な女流作家が、無罪を主張して裁判を繰り返すうち、次第に様々な事実が浮き彫りになっていくという、いわゆる法廷モノのミステリードラマ。
転落死を巡る裁判劇、そこから炙り出される家族の関係性、そしてどこか煙に巻かれたような幕切れ・・・などの共通点から、西川美和監督の傑作『ゆれる』(2006)を強く思い出させる作品でした。もちろん大筋が似ているというだけで、『ゆれる』とはまた全然違った雰囲気と魅力を持った作品で面白かったです。
とりわけ、主人公を演じたザンドラ・ヒュラーさんの演技が素晴らしかった。彼女をなんとか有罪にしようとする、わかりやすくヤな感じの検事が出てくるのも良かったですね。「コイツ、腹立つわぁ~」みたいな(笑)。そのへんは、シリアスな芸術映画路線に偏り過ぎないように配慮した監督のセンスが窺えて、そこも個人的には好感が持てました。
そして、これは独身のひとが観ると「結婚願望が萎える映画」でもあります(笑)。その系譜って、ありますよね。デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』(2014)とか。まぁ、あれは結婚相手がとんでもない本性の持ち主だったっていうエクストリームな話でしたけど、この『落下の解剖学』は、もっとリアルで生々しい夫婦関係の崩壊が描かれるんです。もっともぼくは独身ですけど、でもたぶんこういうのって「あるある」なんだろうなぁって、すごく思いましたね。で、改めて「やっぱりぼくは一生独身でいよう」っていう思いを新たにしたんですけど(笑)。
でも、実際に結婚したことを真剣に後悔するようなひとたちに、ぼくはこれまで何度か接してきましたからねぇ。あと、本当に取り返しのつかない、絵に描いたような悲惨な家庭崩壊劇って、実は身近な現実として日々あちこちで起きてるんですよ。そういうことを思い知らされる出来事もあったんです。
もちろん、ぼくは結婚して家庭を持つことの素晴らしさを否定はしません。近しいひとに結婚や出産の話があれば、心から祝福をします。ただ、結婚できないことで過度に焦ったり思い悩んでるひとたちに対しては、やっぱり「結婚なんかしなくてもいいんじゃない?」って言いたくなりますよね(笑)。みんながみんな、結婚して幸せになれるわけじゃないんですから。
だから『落下の解剖学』は、そういうひとにオススメの映画でもあるかもしれない。結婚できないことに思い悩むんだったら、こういうヤな映画を観てむしろ結婚願望を萎えさしていくっていうのもアリなんじゃないかな(笑)。「あ、やっぱ独身のままでいいわ」って(笑)。
それではまた。